ひまわり
「普通に出来る事を、ただ一生懸命にやって行きたいって――。
恭平はこれまで、今しか出来ない事を精一杯やってきた。だからさ、あたし達が普通に過ごす事が、あいつにとって一番うれしい事なんだと思う」
「今、出来る事を一生懸命か……」
真由が、あたしの腕を握る手を緩めた。
「あいつ、もうじきこの学校にはいられなくなる」
「――えっ?」
「どうしても、転校しなきゃいけないんだって」
あたしの言葉に、真由の頭が垂れた。
「どんなに願ってもさ、時間って止められなくて、歯がゆくて、現実が悲惨過ぎて――。
すごく辛い。だけどさ、恭平は現実から逃げずに真正面からぶつかって行こうとしてるの。
あたしには、そんな事きっと出来ないと思う。だからね、残された時間、あたしも恭平と一緒に今を精一杯楽しむって決めたの」
だから――。
と、あたしが言葉を繋げると、真由は突然立ち上がり深く息を吐いた。
あたしは続きの言葉を口にせずに、ただ真由を見上げた。