ひまわり
手紙を最後まで読み終わり、あたしはすぐに携帯を取り出した。
思いつく限りにメールを打って、家を飛び出した。
簡単にコートを羽織っただけで、走る度に冷たい空気が洋服の隙間から入り込む。
肺がぜぇぜぇと悲鳴を上げ、息苦しくなってきた。
駅まで走って、来た電車に飛び乗って、約一時間。
毎月恭平と訪れていた田舎の風景が、電車の窓の外を流れる。
見渡す限り白銀の世界。
外を歩く人も少ないのだろう。
殆ど足跡も付いていなかった。
まるで、この世にあたしが一人だけの様に、一直線に足跡が長く続く。
新しい雪を踏む度に、シャリシャリ軽やかな音が鳴った。
しばらく歩いて、『蔵島家之墓』と記された前で立ち止まる。
車が一台も通らないこの場所は、とても静かだった。