ひまわり



9回裏――。
 

3―1で、2点リードのまま。
 

恭平、行けっ!
 

徐々に、恭平の構える位置がずれてきた。
 

すぐに体勢を整えてストライクを取りに行くが、
もう、時間なんだってこの場にいる全員が察した。
 

歓声が大きくなる。
 

全員立ち上がり、見方も敵も関係なく恭平の背中を押した。


「恭平っ!」
 

声が出る限り、叫ぶ。
 

あと、一人。
 

恭平は、一瞬強く目を瞑って顔を伏せた。
 

恭平の視界は、もう、かなり狭くなっているのだろう。


お願いっ――。
 

もうちょっと待って。
 

あと少し、恭平に時間を下さい。
 

一球目、ストライク。
 
二球目、ストライク。
 
三球目、ボール。
 
四球目、ボール。
 

順調だった恭平の球が、またぶれ始めた。
 

最初よりも大きく的がずれ、キャッチャーを通り越して、後ろのフェンスに当たる。
 

お願い――。
 

あと一球なの。
 

どうか、恭平に……。




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