ひまわり
「がんばってっ!」
あたしが声を張り上げて、一歩前へ進んだその時だった。
恭平はしっかりとバッターを見据えて、グローブを構えた。
足をしっかり地面につけ、腰をひねって全力でボールを投げた。
自分の鼓動の音で、周りの音が何も聞こえなくなる。
あたしの目には全てがスローモーションで映っていた。
パァーン。と、豪快な音をたてて、キャッチャーのミットに吸い込まれた恭平の球。
その瞬間を、この目でしっかりと見る事が出来た。
「ストライク、バッターアウトっ!」
シンと静まりかえるグラウンドに、審判の声が響く。
その瞬間に、ワーッと全員が恭平めがけて走りだした。
激しく肩で息をする恭平は、走り寄る部員に押し潰されそうになっていた。
恭平は静に微笑んで、グローブを高々と天に掲げ、空を見上げた。
恭平の横顔は、すっきりとした表情をしている。
風を全身で浴びるように空を仰いだ後、あたしの方に体を向けた。