ひまわり


あたしは真由を巻き込みたくない一心で、彼の存在を無視して横を通り過ぎようとした。


だけど、その瞬間にガシっと掴まれた肩。


あたしがよろめくと、後ろから真由が支えてくれた。


「俺が呼んでんだから、さっさと来いよ」


彼に無理やり腕を掴まれて、そのまま廊下に引きずり出される。


心配する真由が追いかけてこようとしていたけれど、もちろんあたしが止めた。


手を顔の前に出して、『ごめんね』と口パクする。


あたしが廊下を引きずられる姿を、廊下にいる全ての人が何事だと注目した。



それは相手が蔵島恭平だからで、


『あの人の命はもうないよ』


誰かがそう囁いたのが、あたしの耳に入ってきた。



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