ひまわり


「なんか、あり得ねぇ事考えてね?」


いきなり核心をつかれて、あたしは一瞬飛び上がった。


だけど、すぐに平然を装った。つもりだった。


「べ、別に?
しかも、あり得ない事って何よ」

「そのまんまの意味だけど?」


彼に言われて、あたしは彼を睨みつける。


あたしじゃ、そういう気分にならないって事ね……


虚しくなる前に、麦茶を一気に飲み干す。



みんながかなりの恐怖心を抱いている彼と、なんで彼の家で麦茶を飲んでいるのか。


こんな急展開、真由が知ったらきっと発狂すると思う。


「おまえさ、俺のどういう噂聞いてんのか知らねぇけど、さっきからビビり過ぎだろ」


そりゃ、陰で薬をやってるなんて噂聞いたら誰だってビビるよ。


ただでさえ、見た目がこんなんなんだから。


「なんか、すごい噂が流れてるんだろ?」

「――えっ?」


一瞬、あたしの心が読まれたのかと思った。


「まぁ、しょっぼい噂なんだろうけど、一体誰から始まったんだか」


ふうっと息を吐きながら髪をかきあげた瞬間、彼の目が、なんだか悲しげに見えた。


それは本当に一瞬で、あたしのただの見間違いかもしれない。


だけど昨日の表情もあるし、彼の少しの変化にも敏感になっていた。



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