ひまわり
「……で?」
腕と足を組む彼が、椅子の背もたれに体重をかけるとギシシと椅子が鳴いた。
「俺の何が知りたいの?」
何でも聞いてこいというような彼の態度のでかさに、あたしは身を乗り出した。
そうそう、あたしはこれを確認しないといけないんだ。
楽しく麦茶を飲みにきたわけじゃない。
本題に入るのが大分遅れた。
「昨日の表情の意味は?」
単刀直入に聞く。
あたしがぐっと顔を近づけても、彼は全く動じなかった。
そして、あたしに一言。
「おまえの見間違い」
「じゃ、学校で一人でフラフラしてるのはなんで?」
「一人が好きだから」
「毎日メンチ切ってるのは?」
「一人になる為」
「じゃあさ、毎日趣味の悪い真っ赤なトレーナーを着てるのはどうして?」
「てめ……」
何を聞いてもまともに答えてくれない彼に、最後に嫌味を言った。
全く先が見えないやり取りに、あたしは乗り出していた体をまた椅子におさめた。
溜息をつきながら、麦茶を飲む。
「人の事は、一気に知るもんじゃねぇよ」
「だって、気になるんだもん」
「なんでそんなに気になるわけ?
他にも疑問持つ奴はいっぱいいるだろ」
そう言われて、あたしは持っていたコップを静かにテーブルに置いた。
「あんたが、一番目立ってるから」
拗ねた子供みたいに口を尖らせる。
「だから、嫌でも目に入るし、なんだか気になる」
片言で言うと、今日何度目かのため息が彼の口から漏れた。
「おまえね、そんだけの理由で俺に付きまとうな」
「なんで?」
「いいのか?
俺みたいに変な噂がたっても。俺だけならまだしも、おまえならすぐに潰れんだろが」
「構わない――」
彼の目を真っ直ぐに見て言った。