ひまわり
『第○○回入学式』
体育館に立てかけられた大きな看板。
桜の花びらがふわふわと舞い散る。
真新しい制服に身を包んだ少し緊張気味の生徒で、体育館内が埋め尽くされた。
長い校長の話しに眠気と闘いながら、慣れないセーラー服のスカートの裾を何度も直す。
隣のパイプ椅子に座るお母さんが、落ち着きのないあたしを見て、咳払いをした。
春だといっても、体育館の中は少し肌寒い。
セーラー服一枚では身震いするほどだった。
式の最中に、辺りを見渡す。
中学の体育館より、心なしか広い気がする。
それに、なんだかみんな大人っぽい。
化粧なんて今までに一度もしたことのないあたしが、少し浮いて見えた。
時々、『久し振り』なんて目くばせしている人もいるし……
やっぱり、みんな知り合いばかりなんだよね。
どうしよう、本当に友達が一人も出来なかったら。
目だけをキョロキョロ動かして人間観察をする。
すると、あたしの斜め前の席が空席だという事に気がついた。
緊張していたせいか、一番身近なものを見落としていたみたいだ。
そんな小さな見落としに驚きながら、
男の子かな、女の子かな、
もしかして、インフルエンザで来れなかったのかななんて、校長の話しそっちのけで色んな事を考えていた。