ひまわり
二人の間に変な沈黙が流れ、さっきからブクブクという熱帯魚の酸素の音だけが、奇妙に響いていた。
「あぁ、あのさ」
この静けさの中で、彼の声が大きく聞こえる。
声を出さずに目だけを向けると、彼は前髪をいじりながら目を泳がせていた。
この人、こんな控え目な人だったっけ?
「なんにも、言われてねぇか?」
突然の質問に、首を傾げる。
「誰に?」
「だから、その、誰かに」
わけのわからない彼の言葉に、『はぁ?』と眉を上げたが、しばらく考えて、彼が言っているのはみんなの噂だって事がわかった。
「何も言われてないよ」
ボコボコにされたなんて噂は、言わないでおこう。
ショックを受けられたら困るし。
「マジで、なんも言われてねぇ?」
「うん」
心配そうな彼に即答すると、『ならよかった』と一言口にして、ゆっくり立ち上がった。