ひまわり
「ひでぇ顔」
「うるさい。誰かさんが暇そうにしてるんだろうなと思ってわざわざ来てあげたのに」
「誰が暇そうだって?」
「蔵島恭平が」
テーブルに指でリズムを打ちながら答えると、彼は今まで読んでいた漫画をパタンと閉じた。
「どこ行くの?」
いきなり立ち上がった彼に、急いで声をかける。
「はっ? 部屋に戻るの」
「なんで?友達を置き去りにするわけ?」
「だって、俺呼んでねぇし。おまえが勝手に来たんだろ」
いやいや、そういう問題じゃなくてね、人の気遣いをおまえは無駄にするのかって聞いてるの。
あたしに家の事情を話してくれた彼は、学校では相変わらずの無愛想。
あんなに優しい一面を見せてくれたのに、他のクラスメートとはまだ一度も話しをしているところを見た事がない。
それに、あれ以来学校ではあたしに話しかけてくるような事はなかった。
それは多分、彼が人の噂を気にしてるからで。
本当に、外見からは想像出来ないくらい人の事を考えられる人で。
やっぱり、みんなの冷たい視線が彼に集まるのは心が痛んだ。
だけど、あたしには何もできなくて、唯一出来る事と言えば、こうやって学校以外で話せる場所に来ることぐらい。
バカなあたしには、解決策を見つける事が出来なかった。