ひまわり


「おまえね……」


ぼーっと一点を見つめるあたしに、彼があきれ顔を向ける。


「どこまで着いてくんの?」

「――へっ?」


彼の一言で、真っ暗だった視界に色が付く。


「俺、便所」

「あ、ごめん」


彼がトイレから出てくるまで、ドアの前で待つ。


どうにか出来ないかな。


学校でも、彼が笑って過ごせるように。


真由もまだ警戒してるみたいだし――。


まぁ、同じ中学だった子達は、もう彼のイメージが沁み込んじゃってるのかもしれないけど……。



「いたっ!」

「おまえ、どうしたの?
さっきから」


また一点を見て考え事をしていると、いつの間にか彼があたしの目の前に来ていて、指で鼻を弾かれた。


「………」

「やっぱし」

「へっ?」


あたしの顔を覗き込みながら、彼が溜息交じりに言う。


「どうせ、俺の事で悩んでたんだろ?」

「な、なんで? ぜ、全然?
なんであたしが、あんたの事なんかっ」


いきなり核心をつかれて、しどろもどろになる。


目が泳ぐのを彼に間近で見られ、彼に鼻で笑われた。




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