ひまわり


お墓……。


あたしはお墓を前にして、身動き取れずに固まっていた。


その隣で、彼がバケツと柄杓を取ってあたしを振り返る。


「ぼーっと突っ立ってないで早く来い」


それだけ言って、いつものように地面に足を引きずりながら歩く。


あまり大きくはない墓地。


靄がかかって少し肌寒い中、彼の後ろを小走りで着いて行った。


どこのお墓も、綺麗にお花が供えられている。


一つ一つのお墓を見ながら歩いていると、ある所で彼が歩みを止めた。


そこには、『蔵島家之墓』と、記されていた。


そこにバケツと柄杓を置いた彼が、ようやく説明をしてくれる。


「ここ、親父とお袋の墓」


そう言って、じーっとお墓を見つめる。


何かを考えるように、両手をポケットに突っ込みながら。


あたしも彼の隣に並び、静止した。


彼のお父さんとお母さんの眠るお墓には、綺麗な花とお酒が供えられていた。


定期的に手入れされているみたいで、他のお墓に比べてきれいに保たれていた。




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