ひまわり


「そう、結婚記念日。
あの日は、この梅雨時期には珍しい晴れ間だった。
お袋なんてかなり喜んでたな。『日頃の行いがいいからね』って、ガキみたいな顔で笑うんだよ。
そんな姿見てたらさ、俺なんだか嬉しくて」


途中、紙袋に入っていたものを彼が丁寧に取り出した。


ここに来る時に、彼が大事に抱えていた紙袋から出てきたのは、色鮮やかな4本のガーベラだった。


大切に取り出し、包装を丁寧にほどいていく。


そして、まだ新しいお花が供えられている花瓶に、両方に2本ずつ刺していった。


「きれい――」


あまりの鮮やかなガーベラの色に、思わず声が出てしまう。


「だろ」


彼は得意げに言ってから、ポリポリ鼻をかく。


「お袋が好きな花だったからさ」

「お母さんが?」

「そう。なんか、可愛いから好きだとかなんとか言ってたな」

「確かに可愛いよね。
あたしも好きだよ、ガーベラ」


あたしが言うと、彼は軽く微笑んでから、線香に火をつけ始めた。


「おまえさ、ガーベラの花言葉知ってるか?」


――花言葉?


彼に聞かれて、脳細胞を活性させる。


だけど、どんなに考えても、ガーベラの花言葉なんて浮かんでこなかった。


「……わかんない」


考えあぐねた結果が、この答えだ。




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