ひまわり
恋模様
「莉奈ーっ!」
シトシトと小雨の降るグラウンド。
軽く寝不足のあたしは大きな欠伸をしながら、声がした方に顔を向ける。
そこには、ジャージ姿で大きく手を振る真由がいた。
きちんと、マネージャーの仕事をこなしているみたいだ。
今年も甲子園目指して、熱くなっているみたい。
真由は、ボールがたくさん入っているカゴを運びながら、大声を出した。
「後で話しあるからっ!」
そう言って、いつもの笑顔になる。
あたしは大きく頷いてから、真由に手を振った。
そのあたしの目の前を、真っ赤な自転車が通り過ぎた。
小雨なのに傘もささずに、自転車置き場に自転車をおさめて、昇降口までだるそうに歩いていた。
その後ろからあたしも着いて行く。
昇降口で靴を履き替える彼に、
「おはよう」
と声をかけても、
「あぁ」
と、学校での彼は相変わらず素っ気ない。
まるで別人みたいだ。
学校ではいつも彼とうまく話が出来なくてウズウズしてしまう。
彼がああやってあたしを避けるようにしてるのは、あたしの事を思ってくれてるんだってわかるんだけど、
わかってるんだけど……なんだかなぁ。
「ねぇねぇ、莉奈っ」
朝練を終えた真由が、額から汗を流しながらあたしの机に突進してきた。
この時を待ってましたと言わんばかりに、目を輝かせている。
「莉奈、聞いてよ。あたしどうしよう!
マジでヤバいかもっ!」
興奮している真由の声は、教室を通り過ぎて廊下まで響いていた。