pp―the piano players―
* * *


 僕の夏は地区予選で無惨に終わってしまった。進路指導の先生や担任は、頭を受験に切り換えろ、と言う。でもこの三年間汗水流して励んできた事に、そう簡単に踏ん切りは付けられない。まだピアノを弾き続けているように。

 六月の半ば。僕は数学の進学補習に行こうか行かないか迷って、中央廊下をゆっくり歩いていた。最近の僕は迷ってばかりだ。答えは見えているのに迷う。今だって、数学の補習に行けばいい。でも気乗りしない。たまに部活に顔を出したいと思う。でも後輩達は後輩達で新しい秩序を作り出しているんだから、それを邪魔することは出来ない。

 それと、進学先。第一志望はそこそこな判定が出ているが、友人に付き合わされて行ったオープンキャンパスの雰囲気が良くて、そこの大学も気になっている。偏差値は結構高い。
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