pp―the piano players―
 開かれた帳簿を覗くと、そこには幾つかのピアノの写真と、その脇に事細かに説明が手書きされている。どれも海外のメーカーのグランドピアノだ。ドイツで作られたスタインウェイに、日本のピアノメーカーのお手本となっているベヒシュタイン、「至福のピアニッシモ」と称えられるベーゼンドルファーは二つ続けて。人が歌うような音色を出すグロトリアン、ショパンが愛用したというプレイエル。
 好きな晩ご飯のおかずばかり、ずらりと並べられているようだ。思わず生唾を飲む。


「これらが、一つ屋根の下にある場所がある」
「どこの店ですか」
「店じゃない、個人の家だ」
「個人?」
 店長の顔を見る。これだけのモノを集められるなんて、どれだけ金持ちで、どんな大邸宅だ。
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