pp―the piano players―
* * *
「気晴らしじゃないって言ったって、お前らは"受験生"だろ?」
夏休みのある日。僕はあの、ピアノだらけの屋敷にいた。週一ぐらいのペースで、早紀と合わせる練習をしている。そこにちょくちょくやって来ては小言を残していくのは、
「圭太郎君、うるさい……」
早紀が耳を手で塞ぐ。この、圭太郎という奴が、初めてここに来た時にショパンを弾いていた。早紀の幼なじみで、僕たちと歳は一緒だ。音大の付属高校に通っているらしい。
「休憩にしよう、酒井君。お茶いれるね」
「ありがとう」
早紀は部屋を出た。圭太郎が、飲食厳禁だぞ、と背中に声をかける。
「じゃあ、支度出来たら呼ぶ」
「俺、玄米茶」
「聞こえなーい」と言いながら、早紀の声は遠ざかっていく。
「気晴らしじゃないって言ったって、お前らは"受験生"だろ?」
夏休みのある日。僕はあの、ピアノだらけの屋敷にいた。週一ぐらいのペースで、早紀と合わせる練習をしている。そこにちょくちょくやって来ては小言を残していくのは、
「圭太郎君、うるさい……」
早紀が耳を手で塞ぐ。この、圭太郎という奴が、初めてここに来た時にショパンを弾いていた。早紀の幼なじみで、僕たちと歳は一緒だ。音大の付属高校に通っているらしい。
「休憩にしよう、酒井君。お茶いれるね」
「ありがとう」
早紀は部屋を出た。圭太郎が、飲食厳禁だぞ、と背中に声をかける。
「じゃあ、支度出来たら呼ぶ」
「俺、玄米茶」
「聞こえなーい」と言いながら、早紀の声は遠ざかっていく。