pp―the piano players―
 ほう、と安堵の息を漏らしたとき、また大きな揺れがあった。余震。着物の袖で頭を覆い、揺れをしのぐ。
「お母さん大丈夫かな」
 揺れが収まって、愛美は携帯電話を取り出した。
「早紀、津波警報だって」

 内陸だから大丈夫だね。と、なんと呑気な会話をしていたんだろう。わたしたちは。
 電話回線は混線していて、愛美の電話はそのときは繋がらなかった。

 ホールに戻り、座席番をしていた結子と合流する。
「早紀、良かった。さっきより顔色いい」
「ありがとう。ご心配おかけしました」
 大丈夫、きっとわたし笑えている。もう大人になった。
「酒井君に介抱されているかと思った」
「確かに。来なかったね。すぐに来そうなのに」
 言われてぐるりとホールを見渡してみるけれど見つからない。
「連絡します」
 アナウンスが始まった。
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