pp―the piano players―
「圭太郎君、ちゃんと生きていたんですね」
圭太郎君の声を聞いて、安心した。それは本当だ。
「酒井君がお仕事で会うくらい、ピアニストとして頑張っているんですね」
夢を選び、圭太郎君は先生の元から巣立ったのだ。あの手紙以来、わたしは圭太郎君の消息を知らなかった。
早紀、と先生はわたしの名を呼び、頭を撫でた。そのまま、頬に触れられる。先生の手が濡れているのはバラの水滴のせいではない。
「もし」
加瀬さんは言う。
圭太郎君と酒井君が先生のお見舞いのために帰って来ることを伝えて、わたしは先生の病室を出た。加瀬さんが車で送ってくれる。