pp―the piano players―
 待合室にいるのは、あの人と加瀬さんと、わたしの三人になった。
「何か、買って来ましょうか」
 声をかける。
「そうね、私も行きましょう」
 あの人が立ち上がった。何も言えず、わたしもそうした。

「加瀬さん、何か食べたいものは?」
 とりあえず聞いてみるが、答えはない。相変わらず、手を組み、足を揺らしている。表情は見えない。
「適当に買ってきますね」
 ああ、とも、うん、とも聞こえるような不明瞭な返事があった。

 病院内のコンビニに向かう。
 二つの小さな足音が、リノリウムの床を進む。

 無言で、お茶といくつかのおにぎりを選んでカゴに入れる。財布を出そうとすると、あの人はカゴをわたしの手から奪うように取り上げて、自分が選んだものと一緒に会計を済ませてしまった。
 
「……すみません。いくらでしたか」
 お店を出て、恐る恐る尋ねた。
「いいのよ」
 あの人はそのまま歩いていく。
「持ちます」
 その左手から、今度はわたしが、ビニル袋を奪い取った。
 
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