pp―the piano players―
ニーナが下りてきた。
「ナオ、圭太郎はここに泊まるそうよ」
そう言うと、緑色の目をきらきらとさせ、ぐるりと家の中を見回している。
「素敵なところね」
「ありがとうございます」
答えたのは早紀だ。声も、表情も柔らかい。ただ、初対面の異邦人への緊張感が混ざっている。
「ここが、ヨシ・シラミネが生まれ育った家なのね」
「そう。圭太郎も、11歳から日本を出るまで、ずっとここに住んでいる。ニーナ、早紀、紹介するよ」
二人を引き合わせる。ニーナはすっと腕を伸ばして、早紀の右手を取った。早紀は少し慌てる。
「Nina Barchetです。ナオから聞いているわ、早紀。あなたもヨシ・シラミネに師事していたんですってね。会えて嬉しいわ」
「ニーナさん、本当に、日本語がお上手ですね」
と、早紀は目を丸くする。ニーナは顔を綻ばせた。
「ニーナでいいわ。Danke schon、ありがとう」