pp―the piano players―
虚しくて笑えて来る。笑いはやがて、嗚咽に変わる。
私とピアノは、父が遺していった物。共に錆びれ朽ちて行くしかないのだ。この古い洋館はきっと、蔦の葉に囲われ、庭木は無造作に生い茂り、荒れ果てて行くのだ。
もう、私が弾けるピアノはない。私がピアノを弾くことで喜んでくれる人もいない。
未来も、希望も。
薄れ行く意識の中で、僅かに思考する。
私の「傑作」は、あの夜に弾いたソナタだったのだ、と。
そう、あの電話が来るまでは、私は闇の中にいた。
そう、あの日にドアを叩かれるまでは、私に未来は見えなかった。
おわり