Dragon Hunter〜月雲花風〜
「クリムゾンの本拠地か?」

「ああそうだ」

宿を抜け出し走りながら会話を交わす。

バルトはエドガーが自分をここに呼び寄せた理由をすでに把握していた。まずは昼間の少女のエネルギーを封じることが一つ。少女の証言の真偽を見極めることが二つ目。そして三つ目が、『紅(クリムゾン)』の本拠地を調べることだ。少女の話の真偽は本拠地を調べればある程度わかる。


「奴のコードは?」

「ザクロ」

「ほぉ」

皮肉気にバルトの口が弧を描いた。

そろそろ外壁が見える頃だ。


「またこら大物やのう」

「大物?」

訝しげに聞くエドガーにバルトは鼻で笑った。

「お前何年も警備隊長しとって知らんのか。『紅(クリムゾン)』の実質のNo.2アルタイルの右腕とか左腕とか言われとる奴やんけ」

「あのアルタイルのか?!」




アルタイル。

巨大闇組織『紅(クリムゾン)』の実質No.2と言われる実力者だ。戦闘能力ももちろん高いが、むしろ奸智に長けた策略家として知られている。素顔も素性も経歴も何一つとしてわからない謎の男としても有名だ。大陸で起きる戦争の影には必ず彼の姿があるとさえ言われている。各国の警察や警備隊が総統カイン・クリムゾンよりも警戒する相手だ。

その側近のザクロは情報の操作、収集に長け、アルタイルとともに暗躍してきた。


とはいえ、彼らはクリムゾンの中でも、特にザクロは、裏方であり所謂実動部隊ではないため、エドガーが知らないのも無理はない。



「とりあえず、彼女の尋問したんやろ。お前の見解を聞かせろ」

外壁を乗り越えバルトは言った。

「嘘はないが言ってないことが多いという感じだな」


「そうか」



バルトは立ち止まった。すっと目を細める。



「ここやな」



目の前には大きな洋館。



「そうだ。時間凍結魔術で現場は保存している」



バルトは一歩足を踏み出した。


「伏魔殿か。待ち受けるは鬼か蛇か」

ふっと凄絶な笑みを浮かべて、バルトは扉を開いた。








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