Dragon Hunter〜月雲花風〜
二人は慎重に進んで行く。
途中にいくつかのトラップがあったが、バルトが気付いて回避、もしくは解除し、事無きを得ている。でなければ今頃二人はただの肉の塊になっているだろう。
点々と続く血痕はおそらく少女が残したもの。
だが、バルトはある分岐点で血痕のない道を選んだ。決め手はねっとりとべたつくような空気。もう何度も経験し、少しの空気の変化だけでわかるようになった死の気配。だが。
(おかしい)
バルトは違和感を感じていた。この屋敷に入ってからどうしても拭えない不安。
(…上手いこと行き過ぎやないか?)
そして、この血痕だ。バルトは頭を振って不安を打ち消そうとした。こういう時、わずかな迷いが判断を狂わす。自分一人なら何とかなるが、エドガーがいる。
不安を感じるバルト。しかし、その嗅覚が微かに漂ってくる鉄の臭いを感じとる。
(こうなったら腹括るしかないか)
バルトは歩を進めた。
段々と強くなってくる鉄、いや血の臭い。いくら嗅ぎ慣れていても慣れるものではない。
と、視界が開いた。
まず目に映るのは辺り一面の《紅》
「これは…。酷いな」
呆然とエドガーが呟くのと同時にバルトは小さく吐き捨てた。
「えげつな」
あちらこちらに転がる死体。その一体に近づき、バルトは検分し始めた。エドガーもそれにならう。