Dragon Hunter〜月雲花風〜
「俺が聞きたいのはそれやない。あんな牢なんぞお前が本気を出さんでも出れるやろ」
そうやなくて、とバルトは言葉を繋いだ。
「牢から出る気のなかった、寧ろ死ぬことを望んどったお前がなんでここにおるんや」
「それは…」
と声を上げたのはハミルトン。続けようとするのを手を上げて制するバルト。ヒオウから少しも目を離さない。表情は笑顔だが、その視線は鋭い。ヒオウも、その射るような視線を正面から受けてたっている。不安そうな顔をする叡刃。思わず、腕に力が入った。そんな3人をエドガーは静かに見つめている。
「ハミルトン殿が、孵化したドラゴンの幼生体に喰われかけたから。目の前で死なれると寝覚めが悪いから助けた」
そう答えたヒオウにハミルトンが付け足す。
「その後、階段が崩れてしまったので、下まで下ろしてもらいまして、ついでなので町中に散ったドラゴン退治をお願いしたんです」
その言葉に、
「お前…ようやるなぁ」
「ついでって…」
「相変わらず、見かけに依らずしたたかというか、思い切りが妙にいいというか…」
と、3者3様の反応を見せるバルト、叡刃、エドガー。当の本人はしれっとしている。ヒオウはそんな周りの大人を静かに眺めている。
「で」
と沈黙を破ったのはエドガー。
「これからどうするんだ?」
「んなもん…」
と言いかけたバルトに被せるように叡刃が声を上げた。
「あ、『妖精の宿り木』に連れて行こうよ」
「はあ?!お前なあ……」
「ね、いいでしょ」