Dragon Hunter〜月雲花風〜
牢の前に2人が立つと彼女は目を開けた。前髪の透き間から覗くのは血を溶かしこんだような赤の瞳。





エドガーは背筋が凍るのを感じていた。彼女からは抑えても抑え切れない絶大な力が漏れていた。恐らく脱獄しようと思えばいつでもできるだろう。それよりも、こちらに向けられた目にはおよそ生気と呼ばれるものが何一つ無かった。それが彼を戦慄させた。


「いくつか君に聞きたいことがある」

彼女は再び目を閉じた。

「私に答えられることであれば」


それからエドガーはいくつか質問をした。彼女はその全てに的確かつ簡潔に答えていった。

ただ、ハミルトンの言った通り組織のことに話が及ぶと口を鎖した。何度か違った角度から突っ込んでみたがどうやら彼女は頭もきれるらしく、沈黙を守った。

自分のことについては聞かれたら答えた。けれど、一つだけ、彼女が答えられない質問があった。
それは、名前。通り名はあった。本名は知らなかった。

それが、エドガーをひどく切ない気持ちにさせた。



そして、


「そろそろ貴方がたはここを離れた方がいい」

彼女が言った。


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