玲子と泥棒と先生
 
桐生はこんな所で死ぬなんて、思ってもみませんでした。



気がつくと、事故現場を上の方から眺めていました。

血まみれになって死んでいる自分の姿を呆然と見ていたのです。


「ろくな死に方じゃねえや」


桐生はあきれたように言葉を吐き出します。

せめてもの救いは、その扱いが犯罪者ではなく、悲惨な犠牲者だったことでした。



桐生は俗に言う泥棒です。

幸い、今まで捕まったことはありません。

でも、毎晩のように見る夢ときたら、警察に追われる夢だったり、拳銃で撃たれる夢だったりと、何かしら恐ろしい夢ばかりでした。


きっとろくな死に方はしないだろう、内心そんな覚悟はしていたつもりです。


だからといって、こんなにも突然、その日がやってくるなんて、ホント思ってもみませんでした。



 







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