玲子と泥棒と先生
中学になっても状況が変わることはありませんでした。
それは生徒ばかりでなく、どの先生も桐生と関わり合いになるのを避けているようでした。
まるで、桐生の回りだけ空気がよどんでいるようでした。
しかし、そういう桐生を見かねて、手を差し伸べた先生もいました。
新任の女の先生でした。
決して心を開こうとしない桐生に諦めることなく語り続けました。
「桐生君、これだけは忘れないで、君は決して一人じゃないのよ。少なくとも私だけは今年だけじゃなく、来年も、再来年も、そして中学を卒業していった後もずっと、君のことを見守っていくから」