玲子と泥棒と先生
桐生が泥棒だと打ち明けたのは初めてのことでした。
元より人と言葉を交わすこともなく、声を出すことさえ滅多になかったのです。
「今日はどうしてだか、墓参りを思いついたんです」
桐生は玲子と並んで事故現場を眺めながら、ポツポツと語り始めました。
「25年ぶりなんですけど、母親の墓参りに行く途中だったんです」
人と話すことが恐いほどに苦手な桐生が自分から話をしています。
生きている間には考えられないことでした。
「がらにもねえことをしようとするもんですから、このざまです」