玲子と泥棒と先生
 
「私はその先の温泉に行く途中でした」

桐生は目を見開いて、横に並んだ玲子を見つめました。


「昔、いっしょに行ったんです」


玲子は事故現場を見つめたままです。

桐生はどう応えていいのか、わかりません。


「その人とは・・」

「あれから会ってないし、電話もメールもありません」

「・・・」

「まあ、別れるきっかけを待っていたのはお互い様なんですけど、ね」



「・・・」

「でも、私だけ辞めさせられたんです。ひどいと思いません?」

玲子は桐生の方に振り向き、笑いかけました。



 
< 5 / 18 >

この作品をシェア

pagetop