玲子と泥棒と先生
「私はその先の温泉に行く途中でした」
桐生は目を見開いて、横に並んだ玲子を見つめました。
「昔、いっしょに行ったんです」
玲子は事故現場を見つめたままです。
桐生はどう応えていいのか、わかりません。
「その人とは・・」
「あれから会ってないし、電話もメールもありません」
「・・・」
「まあ、別れるきっかけを待っていたのはお互い様なんですけど、ね」
「・・・」
「でも、私だけ辞めさせられたんです。ひどいと思いません?」
玲子は桐生の方に振り向き、笑いかけました。