時計塔の鬼



沖田 夕枝。



それが、私の名前。





もちろん私からは名乗りをあげていない。




けれど、私はなぜ彼が私の名前を知っているのか、深くは考えなかった。



それは、思考が別のことで溢れかえっていたからかもしれない。






彼は、本物の鬼。



こう考えると、彼の全てに納得が行くような気がした。



その美しすぎる容貌も、人を引き込む不思議な瞳も、何でも知ってますと言いたげな態度にも。


< 10 / 397 >

この作品をシェア

pagetop