時計塔の鬼
少女に背を向けさせ、仕方なく今まで着ていた着物の帯を緩めると、僅かな衣擦れの音を立てて衣が落ちた。
次いで、渡された制服に着替えて、最後にネクタイを着けようとした。
が、これが上手くいかない。
仕方ない、と適当に結ばれたネクタイはひどく不格好なものだった。
「終わったぞ」
声に振り返った少女、さくらはその面にぽかーんとした表情を浮かべた。
……もしや、似合ってないのか?
何も言わない彼女を見ていると、そんな焦りが頭に始めたが、それは杞憂で終わった。
「すごい似合うなぁ」
感心にしきったようにさくらが顔を紅くさせて微笑んだからだ。