時計塔の鬼
「……当然だろ?」
なんだ、見とれていただけか。
ニヤリと笑んだその内側では、なぜかホッとしている俺がいた。
「そういえば、昨日も今日もなんで塔に登って来たんだ?」
ふと、疑問に思ったことを問うた。
さくらはすぐには答えなかった。
塔からの景色に視線をやっている姿は、迷っているようにも、静かに言葉を探しているようにも見える。
いつの間にか俯いた少女の先に、並んで飛んでいく鳥の群れが見えた。
煽られて舞う花びらが、風を彩っている。
強い太陽の光は弱まっていた。
じきに、黄昏だろう。