時計塔の鬼
「親の赴任先に着いてくねん。家族は一緒の方がええからって、父さんが」
「……ふぅん」
素っ気無い様な態度を取った俺に、さくらは淡い微笑みを向けた。
何故か、ゲラゲラと笑っている方がマシに思えてしまう。
蜉蝣や蝉は儚いと言うが、真に脆くて儚いのは、人間なのではないか。
そう思わせる笑みが浮かべられた少女から目を逸す。
「……明日も来いよ」
それだけを告げると、意識を薄め、俺は姿を隠した。