時計塔の鬼


また、鋭く風が鳴いた。

聞いていて切なく感じることが、ひどく不思議に思えた。





――タンタンタンッ…



軽やかな足音が連なって、塔の中に木霊した。


来た。


そう思った次の瞬間には、少女は俺の前に姿を現していた。



「シュウ!」


「んぁ? なんだソレ」



唐突に呼ばれた言葉を聞き返す。


すると、階段を上がりきったばかりなために息を切らせた彼女は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑った。


「名前やで。あんたの」


さくらは相変わらずの髪型で、腰に手を当てて立っていた。


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