時計塔の鬼

対して俺はというと、虚を突かれて瞬きを三度繰り返していた。



「名前?」


「そうや。鬼さんやったら、なんや呼びにくいし、第一おかしいやん。そやからうちが勝手に名付けたってん」



自信満々で、どこか嬉しそうに胸を張った少女。


人間は、本当に突拍子もなく面白いことを思い付く。



「へぇ」


「あ、漢字はコレやで!」



しゃがみ込んで、彼女は桜の花びらを並べ出した。



“シュウ”


音が、文字を当てられて、意味を持つ。


“囚”



ははっ。

すげぇな、この女。



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