時計塔の鬼
「ぴったり、だな」
シュウは、囚。
囚とは、囚われ人。
気がつけばすでに“鬼”としてここに居た。
それからずっと、塔に囚われている……否、永遠に囚われ続けるであろう俺にはぴったりすぎる名前だ。
「ありがとな、さくら」
そうして初めて、俺は少女の名を呼んだ。
「どういたしまして」
けれど少女は、先ほどとは打って変わり、どこか寂しそうに笑って。
再び、口を開いた。
耳に心地よい、おかしなイントネーションが零れ落ちる。