時計塔の鬼


「ぴったり、だな」



シュウは、囚。

囚とは、囚われ人。

気がつけばすでに“鬼”としてここに居た。

それからずっと、塔に囚われている……否、永遠に囚われ続けるであろう俺にはぴったりすぎる名前だ。



「ありがとな、さくら」



そうして初めて、俺は少女の名を呼んだ。



「どういたしまして」


けれど少女は、先ほどとは打って変わり、どこか寂しそうに笑って。

再び、口を開いた。


耳に心地よい、おかしなイントネーションが零れ落ちる。



< 132 / 397 >

この作品をシェア

pagetop