時計塔の鬼


「気に入った?」


「まぁな」


「そっか。……シュウは時計塔の鬼やけどさ、心は人間みたいやん。なんかな、魂だけがここにいる、って感じがするねん」



陰りを帯びた表情のさくらからは、彼女が考えでもしていたのだろう、真剣な言葉が吐き出される。



「そっか」


「うん。ただな、シュウは鬼なのは確かで、そやから、この塔からは出られへんのやん?」



塔からは出ることができない。

それは、さくらと出会った日に教えてやったことだった。



「疑うのか?」


「ちゃうよ。そういう意味やなくて、囚われてるのは、シュウが鬼やからやってこと。……鬼から人間には、なれへんの?」



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