時計塔の鬼


「……なれねぇだろうな」



さくらからの質問に面食らったものの、そんなことは聞いたことがない、と返した。

返事に対して、さくらの顔はさらに陰りを増したように見えた。



「……なりたいとは思わへんの?」



俺が、人間に?



「思わねぇよ」



時たま、目の前の少女のような面白い類の人間が現れるとはいえ、人間の大多数は、浅ましくそして醜い精神しか持っていない。

あんな中に入るのなんて、真っ平御免だ。

俺は、時計塔の鬼なのだから。



「そっかぁ。なら教えるけど、この名前は今のシュウの状態を表してるねん」


「だろうな」


「でもさ、シュウもいつまでも囚われてるわけじゃないって……うちは信じたい」




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