時計塔の鬼


真剣な目をする人間の少女は、強く俺を見据えて、そう言い切った。


なんていい目をする人間だろう。

濁ってもいなければ、虚ろでもない。

意志に満ちた人間だけが持てる目だ。



「いつかこの名前が必要無くなったら、好きに変えてな」


「……ああ」


「それだけは言っておきたかったねん」



この時のにこりと笑った女の姿を背景の夕焼けと共に、瞼にしっかりと焼き付けた。



…本当にありがとな、さくら。


そう、心の中では感謝の言葉を告げながら。




< 135 / 397 >

この作品をシェア

pagetop