時計塔の鬼
真剣な目をする人間の少女は、強く俺を見据えて、そう言い切った。
なんていい目をする人間だろう。
濁ってもいなければ、虚ろでもない。
意志に満ちた人間だけが持てる目だ。
「いつかこの名前が必要無くなったら、好きに変えてな」
「……ああ」
「それだけは言っておきたかったねん」
この時のにこりと笑った女の姿を背景の夕焼けと共に、瞼にしっかりと焼き付けた。
…本当にありがとな、さくら。
そう、心の中では感謝の言葉を告げながら。