時計塔の鬼
しばしの間の後、さくらが校門を出る所まで、俺は見守っていた。
歩くのに連動してぴょこぴょこ揺れるサイドのポニーテールが、目印だ。
ブレザーを着た彼女は、振り返らずに学校の門を出た。
けれど
――キキーーッ!!
――ドンッ…
大型の車の鋭い急ブレーキの音に、鈍い衝撃音。
それは、校門に突っ込んできたトラックが、人間を跳ねた音。
「さくら……っ!」
少女の名前を口走った俺の目には、その光景が一部始終映っていた。
見てる間に、校門すぐの前の道路が紅く染まる。
地面に叩き付けられた姿は身動き一つ、しない。