時計塔の鬼
汚れを知らないような瞳。
声も仕草も、全ては無垢で純粋さが現れているようだった。
そんな少女が問い掛けてくるものだから、つい、本当のことを話してしまっていた。
自分が、鬼であるということを。
彼女信じたくないけれど、信じるしかない様子はどこか呆然としていて。
そのボーっとした様子が面白くて、楽しくて、そして心配に思えた。
“また来いよ”
と言ったのに対して、彼女は返事をしなかった。
なぜ、俺はあんなことを言ったんだ?
わからない。
自分で自分がわからなくなる。
彼女、夕枝が去った時計塔にたたずみ、夕陽が沈んだ空を見つめる。
残光が瞳に優しく響いて来て、思わず目を細めた。
あの子は、明日も来るだろうか。