時計塔の鬼
赤いランプを灯した車が去った後。
連絡通路の端っこ、塔の一歩手前で年老いた人間たちがコソコソ話しているのを、聞いてしまった。
「即死だったそうで……」
「ええ、可哀相に」
「しかし、春先からこのような不幸があっては、学校もどうなるんでしょうかねぇ」
「明日、生徒たちと保護者の方々には校長先生がお話下さるでしょう」
「いや、我々教師も楽ではありませんな」
「それにしても、明日からは忙しくなりそうですなぁ」
「仕方のないことですがねぇ」
数分話をした後に、話は終わったとばかりに、愚痴を吐き終えて去った人間たちは、来た時と同様にコソコソと帰って行った。
塔の入り口に、奴等を冷やかに眺めている俺が、姿を消して存在していたことには全く気付かずに。