時計塔の鬼
その夜、空には星も月見えず、闇の中でも濃い鉛色の雲だけが在った。
塔の最上階の俺の頬で、音も立てずに涙が流れては落ち、流れては落ちた。
さくらは死んだんだ。
俺は彼女に何もしてやれなかった。
むしろ、彼女が亡くなった原因の一端には俺も関わっていただろうに。
けど、さくらは俺にたくさんのモノをくれた。
制服に、焦燥感。
衝撃に、哀しみ。
その最たるものは、“囚という名前”だった。
いつか。
いつか、俺が囚から、ただのシュウになれた時が来たならば。
もしかしたら、そんな日は来ないのかもしれない。
否、来ない確率の方が高いだろう。