時計塔の鬼
夕日が姿を消してからすでに少なくない時間が経っていて、辺りは夜の気配に満ちていた。
学校まで続く桜並木に建てられた街灯のぼんやりとした光が、時計塔の手すりに寄り掛かっていた私たちの元にまで届く。
今日は月も星も見えるけれど、その姿はどこか控え目であるかのように感じた。
「シュウが楽しんでるのなら、よかったよ……」
呟くと、冬の冷気がその息を雪色に染めた。
両の手のひらで口元と鼻を覆い、深く息を吐いた。
かじかみ出していた指先に、じんわりと温もりが訪れる。
「さっき、夕枝は俺とずっと一緒に居たいって言ってくれたよな」
肯定の意味で、頭を縦に一振り。
それを見て、シュウは目尻に皺を寄せてくれた。
「ありがとな」