時計塔の鬼
シュウの笑みは優しいモノで、けれど見ているこちらは少し切なくなる。
満足そうに前髪をくしゃりとかき上げたシュウ。
その仕草は、やけに様になっている。
「俺もだから、すごく嬉しかった。……夕枝、ずっと一緒にいようよ」
“ずっと一緒にいようよ”
それは私が何より待ち望んで来た言葉だった。
――欲しかった。
だから願った。
だから求めた。
紙に文字を連ねれば、白の紙を黒くするのはほんの一箇所だけ、という多くはない言葉だけれど。
とにかく、すごく嬉しかった。
思わず笑んでしまったほどに。