時計塔の鬼


シュウの笑みは優しいモノで、けれど見ているこちらは少し切なくなる。

満足そうに前髪をくしゃりとかき上げたシュウ。

その仕草は、やけに様になっている。



「俺もだから、すごく嬉しかった。……夕枝、ずっと一緒にいようよ」



“ずっと一緒にいようよ”



それは私が何より待ち望んで来た言葉だった。

――欲しかった。
だから願った。
だから求めた。

紙に文字を連ねれば、白の紙を黒くするのはほんの一箇所だけ、という多くはない言葉だけれど。

とにかく、すごく嬉しかった。

思わず笑んでしまったほどに。



< 146 / 397 >

この作品をシェア

pagetop