時計塔の鬼

けれど……「嬉しい」と伝える前に、シュウの能力の話が、耳に甦る。



『俺にできるのなんて、それくらいだ』


自分を他人から隔てるような、シュウのあの声と共に。



「でも、“ずっと一緒にはいられない”んでしょう?」


「うん。でもさ、やっぱり一緒にいてぇじゃん」



事も無げにシュウは言い、笑った。

ほのかな灯りによってわかるシュウの顔。

その瞳にはこれといった変化はなくて、彼が本気でそう言ったのだとわかる。


……なんでさらっとそんなことが言えるんだろう。


シュウには聞こえないように、そっと溜め息を吐いた。



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