時計塔の鬼
「あ」
「なんだ?」
閃いた。
シュウと、一緒に居られる道が。
考えれば考えるほど、それしかないように思えてくるのが少しだけ不思議だ。
口角が自然に上がり、微笑みの形となったのが自分でもわかった。
「夕枝……?」
シュウは何事かと、目を丸くしていた。
シュウの髪は緑がかっているためか、光が僅かな場にあっても闇に埋もれることはない。
何より、シュウの瞳は中秋の名月の輝きを凌ぐほどに澄み渡っているのだ。
たとえ、その輝きに見えない陰りが含まれていようとも。
シュウはやはり美しい。
そうしみじみと心中で呟いて、ハッとした。
何度目になるかもわからない賛辞よりも、今、言わなくてはならないことがあることに。