時計塔の鬼
「待ってる」
「……?」
クスリと笑われながらの囁きと共に、抱き締められた格好から解放されて、顔をあげた。
視界に彩色が戻る。
すると、本当にすぐ近くに、シュウの美麗な顔があった。
微笑む彼の顔から、目を逸らせない。
世界はもう太陽ではなく月に支配されているはずなのに、シュウの姿だけはやけにハッキリと見える。
それは本当に美しくて。
神様がもし居るのなら、シュウは神様のお気に入りなのではないかと、ふと思う。
腰に回された腕によって再び強く、引き寄せられた。
シュウの顔がさらに近付いて来て、間の距離が詰められ――
自然に瞼を閉じた。