時計塔の鬼


ざわめきが少し収まったのを見て、教室内をぐるりと見渡す。

真新しい制服に身を包んだ生徒たちと、仲良くやっていけますように。

小さく、そう願った。



「では、授業に入りまーす。現代文の教科書出してねー」



にっこりと笑い、私は授業を始めることにした。

軽く、これからの授業の進め方の説明をして、宿題の確認を先にしておく。

そっと窓に目をやれば、まだまだこれからといった様子の桜の木々が、そのピンクの花弁を宙に舞わしていた。



教室に吹く込む優しい風は、変わらない。


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